NPO・NGOなどの非営利組織で働いている方や、立ち上げ予定の方、また転職を検討されている方にとって、どのような資金源・収入源があるのか気になる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、NPO・NGO等の非営利組織の資金源・ファンドレイジングの方法について解説します。
NPO・NGOの資金源とは?
まず、NPO・NGO等の非営利組織の資金源は、大きく非営利・営利に分けられます
NPO・NGOは、営利事業をしてはいけないと思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。行政などからの委託を受けたり、自主事業を行うことが可能で、その点は営利企業と変わらないです。ただし、出た利益を関係者で分配することはできないので注意しましょう。
NPO・NGOの資金源は「継続性」と「金額」で分けて考える
NPO・NGOの財務戦略を練る際は、各資金ごとの特徴をとらえた上で、適切に組み合わせることが重要になってきます。
具体的には、各資金には「継続性」と「金額」で特徴があります。
上記は目安で、助成金やクラウドファンディングなどは金額は様々です。
また、寄付金なども時間をかけて注力していくことで、金額を大きく、継続性も高めていけるでしょう。
事業運営上、一番理想なのは、継続性が高く金額も多い資金です。ただ、残念ながら、そのような資金源をつくるのは簡単ではありません。
まずは比較的金額の大きい助成金や委託で資金源を集め、寄付金を集めたり、自主事業を育てるなどしていくなど組み合わせていくのが良いでしょう。
次からは具体的なそれぞれの資金源について紹介します。
助成金・補助金
まずは、助成金・補助金について説明します。
助成金と補助金の違い
資金調達をおこなっていると、助成金と補助金という言葉を聞きます。
両者は似て文脈で使われることが多いのですが、違いはあるのでしょうか?
結論から述べると、助成金と補助金は、ほぼ同じです。
補助金も助成金も国や地方公共団体、民間団体から支出されます。また、原則返済不要です。
ただ、主に行政が扱う補助金と助成金の場合、いくつか違いがあります。
まず、補助金は予算が決まっていて最大何件という決まりがあります。そのため、抽選や先着などの選考方法によっては、申請してももらえない可能性もあります。
一方で、助成金は要件が決まっており、それを満たしていればほぼ支給されます。
ただ、上記は主に行政の話で、民間の助成団体が出している助成金でじゃ、採択件数に上限がある場合がほとんどです。
非営利組織の場合、民間の助成団体が行う助成金に応募する場合が多いと思うので、下記のメリットや注意点も、その観点で記載しています。
メリット
まずメリットから見ていきましょう。
まとまった金額を受け取れる
助成財団にもよりますが、数十万〜数百万円程度のまとまった金額を受け取ることができます。
助成額の多い財団に採択された場合、資金調達がかなりスムーズに進むでしょう。
また、財団ごとに支給されるスケジュールも明示されているため、財務計画を立てやすいのもメリットです。
資金以外での支援を受けられる場合もある
助成財団によっては、経営や事業のアドバイスやノウハウ提供をしてくれる場合もあります。
財団のノウハウやネットワークを借りることによって、資金のみならず組織全体としても、基盤を強化してより発展させることができます。
注意点
一方で、注意点もあります。
使用用途が限られる
助成金によっては、使用用途が細かく指定されているものもあります。たとえば、人件費での使用がOKな場合もあれば、NGな場合もあり、助成金によって異なってきます。
そのため、申請時に応募要項などを見て、想定した用途で使用できるかの確認が必要です。
使用期間が限られている
一般的に、助成金には助成期間があります。大抵の場合、1〜3年の活動に限られ、助成金もそれ以内に使用が求められます。
助成期間が終了した後は、資金がなくなってしまいます。そのため、同じ活動を行おうとすると、別で資金の確保が必要になります。そのため、助成期間が終了した後の資金確保についても予め考えておく必要があるでしょう。
申請・報告の工数がかかる
助成金を受け取るには審査に通過する必要があります。審査を受けるために、申請書など必要書類の準備が発生します。
また、助成期間終了後も報告書の提出が求められる場合がほとんどです。
準備や報告の工数が発生するため、申請する際は、それらの時間が確保できるかを事前に考えましょう。
融資
NPO・NGOも一般企業と同様に融資を受けることができます。有名なところですと、日本政策金融公庫などが挙げられます。
融資のメリット・注意点などについて説明していきます。
メリット
融資のメリットは2つあります。
まとまった金額を確保できる
融資は一度でまとまった金額を確保でき、事業基盤の安定化につながります。また、金額によっては、助成金や補助金の申請数を減らすこともできるでしょう。
事業のプロからアドバイスをいただける
審査の過程で、プロの目線で事業を審査いただきます。審査の過程で、今後の事業運営での有益なアドバイスをいただける場合が多いでしょう。
注意点
次に融資の注意点を見ていきましょう。
返済の必要がある点
融資は事業を始める上で必要な資金を借り入れるという意味合いが強いです。そのため、助成金・補助金と異なり返済が必要になります。計画的に事業運営を行なっていくことが求められます。
申請書作成や面談などの工数が発生する
助成金や補助金と同様に、書類作成の工数が発生します。また、多くの場合、面接が求められます。融資決定までに手間と時間がかかるので注意が必要です。
寄付金・会費
次に寄付金・会費の概要やメリット、注意点などについて説明していきます。
寄付金と会費の違い
寄付金も会費も、支援者からお金をいただくという面では同様です。
ただ、一般的に少し扱われ方が異なります。
会費は、多くの場合、年会費を払い該当団体の「会員」になります。「会員」になることで、団体の情報を受け取ったり、一部会員限定のイベントなどに参加できたりします。
また、会員は「正会員「と「賛助会員」に分かれる場合が多いです。
正会員は団体の重要事項を決める際などの議決権がある場合があります。一方で、賛助会員は議決権などはなく、シンプルに団体を応援するという意味合いになっている場合が多いです。
寄付の場合は、「会員」になるという形式ではなく、シンプルに団体を応援する思いで、お金を渡す行為になります。ただ、寄付会員に対しても活動報告を送ったりする団体も多いです。
単発寄付と継続寄付
寄付には、単発寄付と継続寄付があります。
単発寄付は、その名前の通り、1回だけの単発の寄付です。一方で、継続寄付はマンスリーサポーター制度と呼ばれることも多く、決まった額を毎月自動で寄付するものです。
団体によっては、マンスリーサポーター向けに、報告書の送付やイベント実施、オンライングループ招待などの特典をつけている場合もあります。
メリット
次に寄付金・会費のメリットを見ていきましょう。
使用用途が自由な場合が多い
助成金の場合、使用用途が限られている場合が一般的です。一方で、寄付金や会費は自由な場合が多いです。そのため、寄付金が多く集まると、経営状況に応じて最適な箇所に資金を充てることができ、経営が安定しやすくなるでしょう。
ただ、寄付者によっては「〇〇に使用してください」などの用途の希望を持つ場合もあるので注意が必要です。
継続的な資金源になる
継続寄付、いわゆるマンスリーサポーターの場合、毎月の安定した資金源になります。助成金には期限があったり、委託も継続して受注できるかわからないなど、非営利組織の場合、安定した継続的な収益を確保するのは簡単ではありません。
そのため、毎月一定額の収益が見込めることは、財務上非常に安定するでしょう。
注意点
次に注意点を見ていきます。
まとまった額が集めるまでに時間と工数がかかる
寄付金を集めるのには時間も工数もかかります。寄付集めを開始した直後から、まとまった金額を集めるのは簡単ではないでしょう。
時間をかけて丁寧にファンを増やしていく必要があります。
決済システムなどを整備する必要がある
寄付を募るために、決済システムを整備する必要があります。もちろん、銀行振込などでもできますが、クレジットカード引き落としなど手段も多様に用意しておいた方が良いでしょう。
決済システムはクレジットカード会社を利用する他、寄付決済プラットフォームに登録するなどの方法があります。いずれにせよ、決済手数料やサービスによっては初期費用や月間のシステム利用費が発生するので、組織の状況に合わせて選定するのが良いでしょう。
報告などの工数が発生する
寄付をいただいた人に対して、活動内容や使用用途の報告なども発生します。
これらは必ずしも行う必要ないのですが、お礼として、また今後もずっと継続的に寄付いただける関係を築くために行うのが望ましいです。
毎月メールで活動報告を送ったり、年に1回活動報告書を送るなど、感謝の思いを込めて、無理ない範囲で行うのが良いでしょう。
クラウドファンディング
次にクラウドファンディングについて説明します。
クラウドファンディングとは
クラウドファンデイングとは、クラウド(群集)とファンディング(資金調達)を組み合わせた造語で、主にネット等を通じて不特定多数の人より資金を集める取り組みです。
クラウドファンディングサービスに、目的と目標金額を決めた上で掲載し、広くネット上で寄付を募る試みです。
たとえば、新しい学習支援の教室を開きたいので、必要資金100万円をクラウドファンディングで集める、などです。
近年、非営利組織での活用も多くなってきており、資金調達の手法の一つとして注目されています。
メリット
クラウドファンディングのメリットを見ていきましょう。
まとまった金額を受け取れる
設定した目標金額にもよりますが、クラウドファンディングも助成金・補助金と同様に、一度にまとまった金額を受け取れます。
何か事業を始める際に、準備などにかかる費用に使用できるでしょう。また、クラウドファンディングも寄付金と同様に、原則使用用途に制限がないのもメリットでしょう。
期待や応援の声を聞ける機会がある
多くのクラウドファンディングサービスでは、申し込む際に応援メッセージも書ける仕組みになっています。期待や応援の声を聞くことで励みになっていくでしょう。
注意点
次にクラウドファンディングの注意点を見ていきましょう。
連絡や広報などの工数がかかる
クラウドファンディングサービスに掲載しただけでは、中々集まりにくいです。
目標金額を集めるために、友人や知人への地道な連絡が求められます。
手数料が発生する
一般的にクラウドファンディングの手数料は5%〜20%程度です。これは、寄付決済プラットフォームの手数料よりは多い傾向にあります。
そのため、手数料を引いたらあまり残らなかった、という場合もあるので注意しましょう。
お礼品を用意する必要がある
一般的にクラウドファンディングには返礼品が必要です。
返礼品とは、申込の金額に応じて、主催団体が渡す御礼です。
必ずしも有形のものである必要はなく、手紙を書く、HPに名前を掲載する、イベントに招待するなどでもかのうです。ただ、どれも一定の工数が発生してしまうため、返礼品の用意のために、時間や費用を使い過ぎてしまうと元も子もないので注意しましょう。
委託費
非営利法人の場合、主に自治体などから何か特定の業務の委託を受け、その対価として費用を受け取る場合も多いでしょう。
たとえば、自治体が行う学習支援事業をNPOが委託して実施するなどです。
委託に関してのメリットと注意点を見ていきます。
メリット
まずメリットを説明します。
まとまった金額を受け取れる
自治体などからの委託費も、まとまった金額を受け取れるため、財務的に非常に助かります。
また、委託期間が●年間と決められている場合も多く、その期間は安定した収益になります。
実績のアピールになる
自治体から委託された実績は対外向けに良いアピールになるでしょう。
たとえば、企業向けに提案する際や、一般の方から寄付を募る際に、団体の信頼度を醸成する一つの要素になります。
注意点
次に注意点について説明します。
継続受注できない場合、財務体制へのダメージが大きい
委託では多くの場合、期限が決められています。「●年間の委託期間」と決められており、その期限が切れたら、もちろん委託費は受け取れません。
委託費分だけ、財務に穴が空いてしまうため、資金繰りには注意が必要です。
準備・報告等の工数がかかる
自治体の委託の場合、一般的に入札があります。具体的に述べると、複数団体が提案をして、その中から選ばれる必要があります。また委託元に対して、定期的に報告する必要も出てくるため、その工数もかかります。
委託を受ける際は、提案や報告等の工数も考慮して準備を進めていきましょう。
自主事業費
自主事業は団体が独自で行う事業です。
NPOやNGOなどの非営利組織は営利事業を行ってはいけないと思われるかもしれませんが、営利事業を行うこと自体は問題ないです。
自主事業の例としては、スクール事業や、メディア運営、研修や講演など多種多様です。
自団体の活動内容や特徴に合わせて検討していくのが良いでしょう。
メリット
自主事業のメリットについて紹介します。
継続的な事業拡大につながる
事業事業は委託事業のように期間が決まっていません。そのため、事業を続ける限りは、継続して売り上げを出すことができます。
そのため、自主事業が継続・拡大していくことによって、財務基盤が安定化し、組織の発展にもつながります。
売り上げを再投資できる
非営利組織は、出た利益を関係者に分配することはできませんが、事業への再投資が可能です。
自主事業で出た利益を、他の事業に投資することで事業の多角化が実現できます。
注意点
次に注意点について説明します。
営業やマーケティングが必要
自主事業の受注のために営業やマーケティングが必要です。そのため、人件費やHP等の整備や費用がかかります。また、商材によっては営利企業とバッティングする可能性もあり、営業やマーケティングに加え、高いレベルでの商品力も求められます。
事業分野的に難しい場合もある
団体の事業領域によっては、自主事業化が難しい場合もあるでしょう。
たとえば、難民支援や学習支援などの自主事業化はしづらいでしょう。
もちろん、工夫すれば行えますし、講演やイベントなどは可能だとは思いますが、できることが限られてしまう場合も少なくないです。
自主事業に注力したい場合、自団体で何ができるのかを客観的に見て戦略を練っていくのが良いでしょう。
まとめ
今回は、NPO・NGOの資金源・収入源について説明しました。
NPO・NGOの資金は組み合わせて活用していくのが望ましいので、ぜひ記事を参考に資金計画を立てていただけますと幸いです。